農業用水路調査の様子1 ~用水路の種類と特徴~

我々の暮らしを支える農業。

その農業を計画的に実施するには、農業用水路が必要です。
特に稲作では多量の水が必要なので、水路からの取排水施設の完備が重要になります。

農業用水路は、自然素材である石や鉄筋・無筋コンクリート、鋼材である鋼矢板などから作られますが、
自然の摂理で年々劣化します。

ですので、農業用水路を長く使えるように(長寿命化)、水路の変状の状態とその原因を確認する為に現地調査が必要です。
ここでは、その維持管理をしていく上で必要な現地調査の前に、農業用水路の種類を始めにご案内します。

【分類】
擁壁型水路
・鉄筋コンクリート開水路(フリューム、鉄筋コンクリート二次製品水路
・無筋コンクリート開水路(重力式、もたれ式)
・積式水路(コンクリートブロック、石)
・矢板型水路

ライニング水路
・ライニング材料(セメント、アスファルト、土)

無ライニング水路
・素堀水路
・保護水路

 

鉄筋コンクリート開水路

擁壁型水路の内、鉄筋コンクリートで作られる水路には、大きく2種類あります。

フリューム
水路側壁と底版が構造的に一体となって土圧、水圧等の荷重を支持するコの字型の形式の水路。
※街中でも良く見る側溝の様な、側面と下面が一体となった工業製品で、大小様々な大きさあり。

(特徴)
・一体型なので、施工が簡単で早い。
・製品重量が重たく大きいので、材料の搬入方法の検討が必要(クレーンで吊り下げ設置する)。

鉄筋コンクリート二次製品水路
工場製品部材を、現地にてコンクリート材料等で接合するか、組み合わせたもの。

(特徴)
・施工が簡単で早い。
・水路幅を調整しやすい。
・フリュームよりも小型のクレーンで設置できる。

 

無筋コンクリート開水路

擁壁型水路の内、無筋コンクリートで作られる水路には、大きく2種類あります。

重力式擁壁
自重によって土圧に抵抗する形式。壁高が2~3mまでの水路に用いられる。

(特徴)
・底版コンクリートを施工せず、土砂や砕石のみにする場合あり。
・転倒や基礎地盤の沈下に注意が必要。

もたれ式擁壁
地山や裏込土などに支えられながら、自重によって土圧に抵抗する形式。

(特徴)
・底版コンクリートを施工せず、土砂や砕石のみにする場合あり。
・主に切土部に利用。
・重力式擁壁よりも小さな壁体で崩壊を抑止でき、斜面地形が変化しても比較的適応性がある。

 

コンクリートブロック積水路

石積水路

擁壁型水路の内、コンクリートブロックや石で作られる水路には、大きく2種類あります。

練積み(ねりづみ)
コンクリートブロックや石の間に、コンクリートやモルタルを流し込んで接着させ、各部材を一体化しながら積み上げる工法。

(特徴)
・空積みよりも、ブロックや石の接合部が塞がり一体化しているので、流下水に強い。
・剛性を持つので、地盤の変化に追随せず弱い。
・側壁高は5m程度以下が一般的。

空積み(からづみ)
コンクリートブロックや石の間に、コンクリートやモルタルを流し込まずに、各部材を組み上げる工法。

(特徴)
・練積みよりも、ブロックや石の接合部が一体化せず開いているので、流下水に弱い。
・屈とう性を持つので、地盤の変化に追随しやすく強い。
・環境に配慮した水路にも用いられる。
・側壁高は3m程度以下が一般的。

 


矢板型水路

擁壁型水路の内、矢板や親杭の根入れ地盤の受働抵抗と、矢板の曲げ剛性によって土圧に抵抗する工法。
水路護岸では主に、鋼矢板及びコンクリート矢板が用いられている。
※土中に凸凹型の鉄の板を打ち込み、背後の重みに耐える工法。

(特徴)
・地盤が軟弱な場合や、水深が大きいところで使用される。
・護岸施工面積が少なくてすむので、少ない土地を有効活用できる。
・年々鋼材が腐食して厚みが薄くなっていくので、監視が必要。

 

ライニング水路

コンクリートブロックやセメント(モルタル)などの材料によって、水路表面をライニング(覆う)する工法。

(特徴)
・流下水による浸食防止、耐久性の向上
・表面を平滑にし、流下水が流れやすくなる

 

保護水路

無ライニング水路の内、自然地盤(地面)を掘削して、芝や安定剤、敷砂利などで保護する工法。
※地面を掘っただけのものは、素堀水路と呼びます。

(特徴)
・誰でもスコップで施工でき、簡単。
・簡単に施工できる分、下流側の田んぼ所有者などとの利水調整が必要。

 

田んぼへの給排水

このような水路を現地特性に合わせて設計し、農業用水をため池や、水源地にダムのある河川から引き込み、農業に利用します。
普段、何気なく見る道路の側の水路が、実は農業用水路だったりするかもしれませんね。